その瞬間、人を殴るのが怖いなどとは言っていられなくなった。 頭に全身の血が一気に逆流したような感覚に襲われる。 「……けんな……」 「ハァ?聞こえねぇよ」 耳に手を当てるジェスチャーで僕をおちょくろうとする川上。 僕は自分の持てる限りの力を傘に込めて、川上に振りおろした。 「……おっと、あぶねぇな」 でも川上は、ひょいっと軽々傘を避けて後ずさりする。 でも何故か僕の手には鈍い衝撃が走った。 何に当たったのか確認しようとした時、 「お前なぁ……」 と龍馬の低くかすれた声がした。