知り合いじゃない。
けど、初対面ってわけじゃない。
黙っている僕に痺れを切らして美空は不良に話を振った。
「あの……優と知り合いなんですか?」
美空!!頼むから余計なこと聞かないでくれ!
思わず制服のズボンをギュッと握る。
カツアゲされて、泣きながら助けを求めた僕のことをこいつはきっとおもしろおかしく美空に話すだろう。
そして僕は美空から「ダメ男」のレッテルを貼られるんだ。
確かに僕はダメ男かもしれない。
だけど、美空には知られなくなかった。
「優ってメソ男のこと?」
「あの……その『めそお』って何ですか?」
「それはこいつと俺の秘密。なぁ、メソ男?」
話を振る男の目が妖しく輝いた気がして、僕は黙って頷いた。



