「よろしくね、美空ちゃん?」 明らかに緩んでいるお兄ちゃんの口元。 優しく微笑むその姿が恐ろしいほどにカッコよくて。 あたしは倒れないように両足にグッと力を込めた。 「龍馬、俺今から出掛けるから」 「……兄ちゃん……あのさぁ……」 笑顔の消えた龍馬の顔。 その顔が今度は少しだけ強張っているように見える。 「じゃあね、美空ちゃん。ごゆっくり」 お兄ちゃんは横を通り過ぎる時、ポンポンとあたしの頭を叩いた。 そしてそのまま階段を下り家を出ていった。