「きっとおばさんに何か言われたんだよ……」


「メソ男の母親?」


「そう……。おばさん、昔と変わっちゃってね。優って優しいからおばさんを傷付けたりできないんだと思う」


「へぇ。でもまぁ俺にはもう関係ないことだけど」


「龍馬……」


何で美空が泣きそうなんだよ。


美空の辛そうな表情をこれ以上見ているのがしんどくなってきて。



「俺、帰るわ。美空も早く家に戻れ」


美空の頭をポンッと叩きながらもう一度メソ男の部屋を見上げた。


電気の消えた部屋の中でメソ男は一体何をしているんだろう。


困ったことがあるんなら一人で抱え込まずに言ってこいよ。


どうせ、また一人でメソメソ泣いてんだろ。


初めて会った時のように……。


俺はどうすることもできず、ポケットの中の煙草に手を伸ばした。



「……んだよ。ツイてねぇな」


煙草をきらしていたことを今頃になって思いだすなんて最悪だ。


俺は空の箱をギュッと握り潰しながらポツリと呟いた。