「だからさぁー、何回も言ってるだろ?俺もあいつと同じ被害者なんだって。それに俺は殴られたの」


警察署で事細かに調書をとられた俺はハァと盛大な溜息をついた。


「でもな、最初に駆け付けた警官がお前が彼のことを掴んで怒鳴ってるの見たっていうんだよ。彼、片手に財布を持っていたみたいだしな」


「勘弁してくれよ。俺は関係ねぇよ」


「そうだな。お前、昔から弱い者には手出さなかったもんな」


「そうそう。だからさ、斎藤さんからそのバカ警官によく言っておいてよ」


斎藤さんは何度かお世話になっている少年課の刑事だ。


この人のことは信用できるし、俺の力になってくれる。


「頼むよ。早く終わらせたいからさ」


俺が両手をパチンと顔の前で合わせて頼むと、


「ヤニ切れか?煙草吸いたいんだろ?」


斎藤さんは黄色の歯を見せてニヤリと笑った。


「……あ、バレちゃった?」


「すぐに帰れると思うなよ?」


斎藤さんの不敵な笑みの意味を悟った俺は、絆創膏を貼ったこめかみを押さえて溜息を吐いた。