「なんか血出てんだけど。どういうこと?」
「何のこと?知らねぇよ」
ニヤけている男に視線を向けると、男ははめていた銀色のメリケンを外してポケットに押し込んだ。
「ひぃっ……!!」
メソ男は俺を見るなり顔を引きつらせて小さな悲鳴を上げる。
「お前、財布置いてけよ」
すると、男達は互いに目配せして口の端をクイッと持ち上げながら言った。
いつの間にか男達のターゲットはメソ男から俺に変わってしまったようだ。
「ほら、早く出せよ」
不敵な笑みを浮かべる男は俺の前に片手を差し出す。
「あのさ、殴られて血出てんの俺なの。お前らが財布置いてけよ」
「ハァ?俺らが殴った証拠なんてどこにあんだよ?」
「メリケンに俺の血がついてんだろーが」
そう答えた瞬間、メソ男が俺達の間に割って入った。



