「で、何が言いたいんだよ」


「お前には借りがあるからな。これ覚えてるか?」


川上は薄く唇を開けて前歯を指差す。


こいつ、勘違いしてる。


お前の前歯を折ったのは、俺じゃなくて俊平だ。


このバカ、まだ勘違いしてやがる。


「それは俺がやったんじゃないだろ?逆恨みすんのやめてくんない?」


「この借りは必ず返してもらうからな。どんな手を使ってでも」


「悪いけど、俺忙しいんだわ。気持ち悪いからあんまりまとわりつかないで?」


うんざりしながらも、優しい口調でそう頼むと川上は俺の足元に吸い掛けの煙草を投げつけた。