「何か飲み物持って来るわ」
「……うん、ありがと」
お母さんが席を外すと、おばさんはあたしの方に体を向けて薄い唇を開いた。
「優ったら最近やたらと帰りが遅いのよ。美空ちゃん、何か知ってる?」
「帰りが……遅い?」
「そう。今までは学校が終わるとすぐに帰ってきていたのに。最近じゃ23時過ぎに帰ってくるなんてざらなのよ」
おばさんは少しだけ苛立った様子で唇を噛む。
あたしは恐る恐る口を開いた。
「優にその理由、聞きましたか?」
「聞いたわ。でも答えてくれないのよ。だから美空ちゃんに聞きに来たの」
優……バイト始めたことおばさんに言ってないんだ。
何で秘密にするんだろう……。
おばさんの痛いほどの視線を浴びながら、あたしは目を伏せた。



