「……そういえば、さっきの綺麗な女の人と龍馬はどういう関係なの?」


聞かないほうがいいのかなと考えたけど、やっぱり気になる。


あたしが尋ねると、龍馬は口の端をクイッと持ち上げた。


「ヤキモチ妬いてくれたとか?」


「そ、そんなんじゃないけど……ただ勝手に逃げ出しちゃったし、嫌な思いさせちゃったかな……とか色々考えてて……」


痛いところを突かれたけど、女の人に負い目を感じているのは確かで。


暗くなるあたしとは対照的に、龍馬はニコッと明るい笑みを浮かべた。


「あいつはちょっとした知り合いみたいなもん。お互い意識してないし、クラブで会ったら喋る程度の関係」


「……女友達?」


「それは違うな。俺、女友達ってつくらない達だから」


「どうして?」


「さぁ、どうしてでしょう?」


うまくはぐらかされた気がするけど、龍馬の目が妖しく光った気がして少しだけ腹が立った。


「あいつ、美空のことすげぇ可愛いって連発してたぞ?今度あいつに会ったら、自慢してやる」


龍馬はフッと優しく微笑むと、あたしの手をギュッと握った。





「じゃーな」


家の前に着くと、龍馬はあたしの頭をポンッと叩いた。


「……うん。バイバイ」


本当はもっと一緒にいたかった。


でも、そんなワガママ言ったら迷惑だよね。


手をヒラヒラと振りながらそんなことを考えていると、龍馬はピタリと立ち止まった。


「寂しいとか?」


「え?」


「もっと一緒にいたいとか?」


「……何でわかるの?」


今の自分の気持ちをズバリ言い当てられて目をパチパチすると龍馬はクスッと笑った。



「今の俺の気持ちを言ってみただけ」


「え……それって……」


龍馬も、寂しいとかまだ一緒にいたいとか思ってくれてるの?


「じゃあな。腹出して寝て風邪ひくなよ」


あたしが聞き返すと、龍馬はクルっと背中を向けて歩き出した。