フッてくれて有り難う【季節短編】





サァーというさらさらした音が聞こえ出すと、さすがに壁にもたれるのはやめて、自転車置き場の屋根の下へ逃げ込むかのように入った。


完全に灰色の空となった空はあまりに不安定で、悲しい。


こちらまで不安になりそうだ。


『雨かー。最悪』


『お前雨が嫌いなわけ?』


『そりゃ誰だって嫌いでしょ』


『そうかぁ?俺は好きだけどな、雨』


『何でよ?』


『だって雨って空が泣いてるみたいじゃん。なんかそう思うと、あったかくなんない?』


『何だそれー』


あの時は笑ってからかったけど、そっかそんな考え方もあるんだなって思った。


何よりあの笑顔。何であのタイミングで出すかなぁ?


こっちは赤くなってるの必死で隠して大変だったよ。


でも今回ばかりは空より私が泣きそう、かな。


私は制服の裾を、残った力を絞り出すかのように握り締めた。


その時、ふいに昨日からの水溜まりがばしゃばしゃと音を立てるのが聞こえた。


「どうしたんだよ、こんなとこで」