ボディーガード

受話器の向こうで彼女が言う。


「突然ごめんね。今、仕事帰りでバスを降りて家に帰るところなんだけど、道が暗くて怖いのよ。着くまでの間、話し相手になってくれないかしら?」

その口ぶりからナタリーは、僕とのことはもう過去のことなんだと完全に割り切っているようだった。

男と女の違いを感じた。


「いいよ。女性の夜道の一人歩きは危険だからね」
 
僕は自分の気持ちを押し殺してそう言った。


彼女が家に着くまでの束の間のボディーガードだ。