ボディーガード

「ありがとう、家に着いたわ」
 
ナタリーのその言葉で僕の心は過去から一気に現実へと戻された。

僕の言おうとしていた言葉だけが過去に置き去りにされた。

僕の役目は終わったのだ。

ナタリーは無事家に帰り着いた。

もうボディー・ガードは必要ない。


「それじゃ」

それだけ言うと僕は受話器を置いた。

部屋の空気が一気に重苦しくなり、僕の心と身体をじりじりと押し潰そうとしていた。
 


そのとき、それを振り払うかのように、玄関のチャイムが僕の全身に鳴り響いた。
 

まさか、と思い走りよりドアを開けた。

そこには満面の笑みを浮かべたナタリーが立っていた。


「帰ったわよ、マーク」



僕の役目はまだ終わっていなかった。

僕はこの先ずっとナタリーを守り続けることを固く心に誓い、彼女を強く抱きしめた。


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