ボディーガード

「ねえ、わたしたちが初めて行った旅行の場所を覚えてる?」
 
話題が僕たちの想い出に移った。

僕にはまだ二人の想い出を語るには早すぎた。

そんなことをしても今はただ辛くなるだけだ。


「あそこにね、この間友達が行ってきたのよ。どうだったって訊いたら雨が降っていたからあまり楽しめなかったって言ってたわ。わたしたちが行ったときは、晴れていてすごい楽しかったわよね」


「そうだね」


「本当にそう思ってる?なんかそんなふうに聞こえないわよ」


「思ってるよ」
 
そう聞こえないのはキミが今の僕の気持ちに気付いていないからだよ。


「ならいいけど・・・、そうだ、いつかこの映画観に行こうって言ってけど結局行けなかったのあるでしょ?あれがこの前レンタルになってたんで借りて観たのよ。面白かったわよ」


「そっか、よかった」


「よく二人で映画観に行ったわね」


「そうだね」


「初めてのデートも映画だったわよね」


「そうだっけ?」


「そうよ。観に行こうってマーク、あなたが誘ったのよ」


「そっか」


「そして二度目のデートはドライブに行ったのよ。ちゃんと覚えてる?」