リビングに行くと、お母さんがもうトーストを焼き終わっていた。

「階段下りる足音がしたから焼いておいたんだけど、冷めちゃったわね。チンしようか?」

「いいよ、これで。私以外と冷めたトーストって好きだから。」

奏美は、冷えたトーストを一口かじった。

少し硬くなり始めてる。

用意されてたプレートの上のスクランブルエッグとサラダも食べ、トマトジュースを飲んだ。

高校生の頃は、トースト一口だけで学校に行ってたんだっけ。

それからおばあちゃんの部屋に行って…

最近は、朝も時間に余裕のある生活をしている。

もう一口だけで慌てて出かけるようなことはない。

ハニーティーだって、夜になってからゆっくりと飲んでいた。

思い出したくないけど思い出す。

おばあちゃんに会いたい…

でも簡単に会いに行っては、お父さんとお母さんに悪い気がした。

せめて、人間界の四十九日が終わるまで、それまでは我慢しよう。