カップに残った最後の一口を飲み終えると僕は席を立った。


「ありがとう」
 
会計を済ませた僕はウェイトレスにそう告げ店を出た。

柔らかな風が頬をそっと撫でた。
 


はじめて口にしてから多くの歳月が流れた今、僕はブラック・コーヒーを苦いとは感じない。

しかし、まだ心から美味いとも感じられずにいる。

どうやらまだまだのようだな、僕は。