やっぱりあたし…
そう言いかけた時、その言葉は彼の大きな声に遮られてしまった



「やっぱ俺、せんせーのそういうとこが好きだったなー。」


“だった”
そう過去形にされることに少しだけ胸が痛んだ

彼はそれからそっとあたしの身体を離し
小さく微笑むとこう続けた


「俺ね、先生の笑った顔が好きだったんだー。
それまで教師ってどっか生徒と壁がある感じがしてたんだけど…
先生は違ったでしょ?
俺の話しをちゃんと聞いてくれて、俺のこと分かろうとしてくれた。
俺先生のそういうとこが好きだったよ。」



真っ直ぐにあたしの目を見つめる彼に
固まっていた心が溶けはじめる



「高校生最後の夏に良い恋させてもらいました!
ありがとう、せんせー。」


彼があたしに背を向ける

教室の扉に手をかける


その動作一つ一つがスローモーションのように思えた



「…って…。待って!」





.