「こんなの送れるわけないじゃない。」


そんな間違った気持ちをかき消すかのように
誰もいない教室であたしはそう独り言を呟いた

それなのに
いつまでたっても意識はその紙の中で
下手をしたら紙に穴が空きそうなくらいに目が捕らわれている



この高校に赴任した初日に
年配の先生方から口を酸っぱくして言われたこと。
それは間違っても男子生徒とおかしな関係にはならないこと、という忠告だった。

“あなたの様な若い先生にありがちなんだから…”と何度も言われたのに。


当時のあたしは
もちろんそんな漫画みたいな話しありえない、なんて思ってたし

生徒に手を出すほど自分は落ちぶれてないなんて
大きく自分を買い被ってた



それなのに今のあたしは何だろう。

こんな意味のない手紙に胸が締め付けられて


まるで高校生の頃に逆戻りしたみたいだ。