「お…大人をからかわないの!」


「からかってなんかないよー!
俺は素直な気持ちしか言わないタイプだから」


そう言うとお得意のスマイルを向ける。

きっとあたしがまだこの子と同い年くらいなら
この笑顔にすぐコロッといっちゃうんだろうなぁ。

でも今はそうはいかない。だってあたしは教師で彼は生徒だから。


「さっ。
早く終わらせてさっさと帰ろ!」


「…はーい」



間延びした彼の返事が
放課後のほのぼのとした空気に溶け込む


二人っきりの補習。
胸のドキドキ。
彼の笑顔。


全てがそろったこの舞台で

あたしは大きな大きな過ちを犯すとも知らずに

そんな空気を肌で感じていた