あの日。

諦めたように背を向け、教室を出て行こうとした彼に
あたしはダメだと分かっていながらも

彼を呼びとめてしまった


もしあたしが本当の気持ちを言ってしまったら。
そんなこと頭では十分に分かっていて

だけどその時のあたしは
自分の世界から彼が消えてしまうことに恐怖すら感じていたのだ




「…あたしも赤谷君のこと好きなんだよ?」




そう口から言葉がこぼれた後
待っていたのは、ここから消えてしまいたいという衝動だけ。

あたし・・・何てことを。

恥ずかしさで頭がおかしくなりそうだった


顔に熱がたまって
徐々に赤みを帯び始める

あたしはそんな自分を見せたくなくて
ぎゅっと目をつぶり下を向いた