あたしがそっと振り返ると、陸さんが「行くぞ」と言って歩き始めたので、あたしはその後ろを追いかけた。


さっきまで花火をしていた子達や、声を掛けてきた理香子の男友達もみんないなくなっている。


辺りは外灯も消え始め、本当に真っ暗になり、ほとんど何も見えない状態。



「・・・みんないつの間に帰っちゃったんだろ・・」



そう独り言をつぶやくと、前を歩いてる陸さんが振り返らずに言った。



「あんたら話なげーよ。女ってホントしゃべんの好きだな」



確かに栞と語ると、知らぬ間に何時間も経っているということはよくある。


いつも自覚はないけれども・・・



「きゃっ!!」



あたしは砂浜から道路に出るまでの階段でつまずいてしまった。


すると、陸さんがあたしの腕をつかんだ。



「ほら」



結局腕をつかまれたまま、陸さんの単車が止まっているところまで連れて行ってもらった。



「あんたって、どんくさいよな」



ごもっともな意見に反論できない。



陸さんは笑っているようだったけれど、暗くてその表情がよく見えない。


でもどんな風に笑っているのかは想像できた。



意地悪で、でも優しい瞳。