誘う手の群れ

「おい! テル!」


昌人は慌ててそれを阻止しようとしたが、誘う手の群れは昌人のほうまでも絡み取ろうとして近寄ることができない。


「だめだ逃げよう!」


夢月がなかば鳴きそうにそう言うと、昌人の服を強引に引っ張って昌人を洞窟の外へと連れ出そうとする。


「テル! テル! テル!」


昌人は泣きながら輝彦の名前を呼んだが、輝彦にはなにも聞こえないのか、あるいは輝彦みずからの足で洞窟の奥へ奥へと進んでいってしまった。

それが輝彦を見た最後の時であった。

夢月によって強引に洞窟から連れ出された昌人は泣きながら山を駆け下りて、自転車を蹴って警察へと駆け込んだ。