ブツブツとさっきから悪態をつき続けるアタシに呆れつつも、美夜は大人しく耳を傾けてくれている。

あの後結局、驚きまくって目を覚ましてしまったアタシをうまく寝かしつけてくれた波矢斗兄が朝、爽やかな笑顔で

『はい、綾羽。ちょっと気が変わってね。捕獲してみたんだ』

と小さな箱を手渡してくれたのだ。
何気なく箱を開けてみたら驚くほどのどぎついピンク色に染まったネズミがその中にはいた。
昨夜は普通に薄汚い灰色だったのに、何故だかパッションピンクに染められたネズミは箱の隅っこで気の毒なほどに丸まっていて正直、同情を禁じ得なかった。

「なんでピンク・・・・」

朝の出来事を思い出して脱力したアタシに美夜はクエスチョンマークを浮かべつつ

「次の時間、寝ちゃえば??」
と提案してくれる。
寝られればどんなに楽だろう。
そう思っても授業中の居眠りなんて!!と思ってしまう真面目な自分の性分が恨めしくてしょうがない。

「うぅ~・・・。和泊が羨ましい・・・。」

和泊とは、クラスメイトの和泊 夾助のコト。
この前進級してクラス替えがあってからまだ一度も授業に参加していないマイペース人間。
今まで同じクラスになったことがなかったので、当然のことのように交流もなくてアタシは和泊の事を噂程度にしか知らない。