―――私は今、小早川千秋の車の中にいる。
どうしたらいいかわからない。
ただ、俯いて座っていることしかできなかった。
「下向いてたら車酔いするよ」
信号待ちの間、彼は笑いながらこちらを向いた。
視界の端に入ってしまいそうで私はさらに下を向く。
今日の小早川千秋はいつもよりラフな髪型で、格好なんかはモデルみたいにキマっていて、直視できない。
「和葉ちゃん」
「…はい?」
「かわいい」
―――!
私の顔は一気に燃え上がった。
信号は青になったようで、前を向き運転している彼の横顔を私はちらっと見た。
憎らしいくらい平然としていた。
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