―卒業式の日―

「お疲れ様でした」

そこには門出を祝い、お涙を頂戴するメイヤはいなかった。

「もえちゃん、おめでとう」

メイヤとは違い、アーサンは涙を流していた。

「もう制服姿は見れないんだね」

違う意味で。

「くだらんこと言うとらんで城に帰るぞ」

魔王は友達などと別れを惜しむ様子はなく、式が終わるとすぐに城に帰った。

「うっとうしい学校生活もやっと終わった。今日の式も雰囲気が気に食わなかったな。アーサン、気晴らしに組手をやるぞ。また女にしてやるからかかってこい」

ジョークもブラックさを増している。

組手を始めてみると、魔王は至って余裕なのにアーサンは本気を出していた。

「何をふざけておるのじゃ、アーサン。もっと本気を出さぬか」

魔王の強さはもう完璧に近かった。

「もえちゃん、ちょっと力抑えて、いやもっと強く……」

魔王のあまりの強さにテンパり出した。

アーサンがテンパり出したと同時に、魔王の目つきが変わる。

「ストップ、ストップ」

魔王からは殺気が出ており、危険を感じたアーサンは組手を中止しようとした。

「おせんべいあげるからストップ」

苦し紛れに言った言葉で魔王の攻撃は止んだ。
殺気も消え、目をキラキラさせている。

「せんべい、せんべい」

アーサンはあまりのダメージで動けなかったが、魔王の喜んでいる姿をみてほっとした。