―新学期も始まり―

「メイヤ、もえの進路の事なんじゃが」

魔王も早いものでもう18歳になる。
卒業後の進路を考える時期になったのだ。

「大学に行かないと駄目か?」

中学、高校と進学することを強制されてきたので、当然今回も大学進学を強制されるものと身構える。

「大学に行きたいのですか?」

質問を質問で返されてびっくりした。

それよりもメイヤが大学に行く事を想定していなかった事にびっくりした魔王。

「え、行かなくてもよいのか?」

魔王は驚きのあまり会話を成立させる事が出来ない。

「高校卒業後は魔王様のお好きになされて構いませんよ」

「そうか」

今回大学進学を強制するのにメイヤからどんな難癖が飛び出すのかちょっと楽しみにしていた魔王は驚きとは同時にがっかりもした。

「本当に好きにしてよいのか?」

「はい、構いません」

魔王はようやく自分で選べる進路に期待を持つ。

将来的には『魔王』として君臨しなければならないが、それまでの進路を好きにしていいのならもう決まっていた。

「アイドルになる」

魔王はメイヤの言葉を聞いて即断した。

「魔王様、あなたはアイドルにはなりません。進路はもう決まっているのです」

そう魔王には聞こえないように呟くとメイヤは踵を返して自室に戻った。

この時、メイヤがアイドルに『なれません』ではなくて『なりません』と言った意味は1年後に分かることになる。




修得:判断力