―桜も散り―

「魔王様そろそろ新しい魔法を覚えましょう。既に魔王様には上位魔法を使えるだけの魔力が備わっています」

連休になり、メイヤはそれを利用し新魔法の修得をするように言ってきた。

「上位魔法は覚えないと駄目か?」

「覚えなければなりません。すぐやられてしまいますよ」

「そうじゃよな」

魔王はあまり気乗りがしなかった。

一年前、『もう一人の魔王』が出て以来、魔力を使うと体や心の中に違和感が出る。
『もう一人の魔王』が出る兆候なのかもしれない。
上位魔法を使うことで自分を抑えることが出来るのか心配だったのだ。

「どうされました魔王様?ご気分でも召しませんか?」

「そんなことはない。始めよう」

魔王は一年前のことは二人に話しておらず、今更周りに心配をかけたくない思いから、自分の不安を押し殺して上位魔法の修得に励んだ。

(ヤバいな。抑えられるか)

魔力を使う度に魔王は心の中で『もう一人の魔王』の存在を意識せざるを得ない。

だが何事もなく上位魔法の修得は出来た。

ただメイヤは魔王の異変を見逃していなかったのだ。




修得:上位魔法