それは、俺も奏もまだ幼い日のこと。 「奏、いくぞー? それ、高いたかーい」 「キャー、ふふふ♪」 「高いたかーい」 「きゃー♪」 無邪気に俺の腕の中で笑う奏は本当に可愛い。 うん、世界一だ。 「にぃに、もっと~」 鈴の音のような催促の声に俺は戸惑った。 いくら兄とはいえ、1つしか年の違わない妹を高い高いするのは少々骨が折れる。 他ならぬ可愛い妹の頼みならば、応えてやりたいのだが……。