関係を再開した二人だったが、それでも聖夜は不安を抱えていた。

心を開きかけた美留久より、それは具体的かつ現実的な不安だった。

傷ついた美留久の心は、ほんの僅かな恐怖にも敏感だ。

たった一度の過ちが、取り返しのつかない大きな後退になることも有り得るのだ。

そのことを聖夜にきつく戒めたのはジャックだった。


「聖夜、君にその覚悟があるのか?」


彼は聖夜に何度もそう問うたのだ。

事を急いてはいけない。

美留久の打ち解けた笑顔を見るたび、手を伸ばしたくなる衝動を聖夜は必死に抑えた。

確かなその時が来るまで。

聖夜はその時をじっと待った。