――ドゥ・レ・ミァ・ファ・ス・ラ・セィ・ド・・・ 十年以上封印されていたピアノは、ちょっと可笑しな音階を奏でた。 美留久が、指が動かし簡単な曲を弾くと、それはヘッポコ間抜けな音を吐き出した。 それはまるで壊れかけた今の自分。 「あはは……、変な音……」 美留久の中から、自然に、笑いと涙がこみ上げてきた。 あまりに間抜けで可笑しくなった。 氷が溶け出したのだ。