「お前、なんで泣いてる?」
ハクの言葉で我に反る。
そして自分の頬を伝う、冷たい雫に気付いた。
「なんでもない、別にたいしたことじゃない。」
なんで、今になって思い出すかな。
忘れたはずなのに。
「あぁ。」
短くて低いそれは、
あたしに対する質問じゃない。
これは不器用なハクなりの優しさ?
それとも興味がないだけ?
「あたし、頭冷やしてくる。」
もう泣かないと決めたのに、
どうしてあたしは泣き虫のまま成長しないんだろ。
強くなりたかった。
だから喧嘩するようになって、
父親の影響か喧嘩はすぐに強くなって、
いつのまにか“龍桜姫”なんてみんなから呼ばれる極道になってて、
それでも、本当に強くなった訳じゃないってコトに気付いた。
泣き虫なのはかわらない。
心は弱いまんまなんだよ。


