男は優雅な仕種でシルクハットを頭にかぶせ、ステッキで床を叩いた。


『なんの用だい?』

『おや。わかっているくせに…』

『今日は…特別に取引を』

『エロスでも連れて来るのか?タナトス。君はエロスとは犬猿の仲じゃないか』


タナトス(死を司る神)と呼ばれた男はコレットの持ち物や家に飾られた絵画を物色しながらおかしそうに彼を見た。


『ふふふ…けれども、親友でもあるのですよ』

『よくわからない奴らだね』

『それで、取引なのですが…どうします?』

『まぁ、話くらいは聞いてやるさ』


コレットにはタナトスは見えないらしく、コーヒーを片手に新聞を読んでいる。

タナトスはコレットを横目で見、彼の隣に腰を降ろした。