これといった会話もなく教室まで向かっていると、ふと、前を歩く佐山君が振り返って話しかけてきた。

「あ……そうだ。8位、おめでとう」

その言葉に、ギョッと目が見開き、また咳き込みそうになった。

よりによってその話題なんてっ…!!

「いやっ…あれはっ、……ていうか、佐山君も5位だったじゃない!」

「まぁ…そうだったね」

そう言って佐山君はクスクスとおかしそうに笑っている。

「それにっ、佐山君の純粋な票と違って、私のは話題賞っていうか、…からかわれてるようなものだもん」

「ハハ、そんなことないよ」

私の自虐的な言葉に、今度は声を上げて笑っている。

……さっきまでの気まずさがウソのよう。

自然に会話ができている。

佐山君が気を遣ってくれているのかもしれないけど、あの重い空気がなくなり、とてもホッとしていた。


「何で表彰式出なかったの?1位の久世もいなかったから、2人でバックレてるだろうと思ってたけど」

「表彰式なんてっ…!そんな場違いなところ出れないよ!」

「それを言うなら僕もだよ。無理やり連れて行かれたけど。でも、原田さんの性格なら分かる気がする」

「たぶん、お願いされてもあれは無理かも…」



こうしてしばらくイベントの話題について話していたけど、突然、佐山君の声色が変わった。


「……原田さん、ごめんね」

「え…?」

突然謝られ、ビックリしながら佐山君を見上げると、その顔は苦痛そうに眉を寄せていた。