「あいつと、何を話してた?」

「ええと……」

泰造の時は、何を話してたのかとそれほど問い詰めてこなかったけど、今は言うまで容赦しないという感じだ。

とにかく、この状況から一刻も早く解放されなければ…。でも、なんて答えれば…。

必死で答えを見つけようとグルグルと考えを巡らすけど、私の頭は今、まったく役に立たない状態だ。

何せ、目の前には久世玲人の顔。

不機嫌そうに歪められているけど、素が端整な顔つきなだけに、恐怖よりも照れの方が上回ってしまう。


うぅっ…。

またもやカーッと顔が赤くなる。


久世玲人に見つめられると、条件反射かのように真っ赤になってしまう。


「何、その反応。……何かされたのか」

「違っ…!!」

久世玲人は、私が赤面したのは佐山君が関係してると誤解したのか、ますます眉を寄せて凄んだ表情になる。

思わず俯いてしまうけど、久世玲人はそれを許さないといった感じで、私の顎に手をかけてクイッと持ち上げた。


再びその強い双眼に捕われ、逃げられない。



「菜都、忘れるな」

「な、に…」


顎にかけられていた手が頬に移動し、ゆっくりと撫でられた。触れられている部分が、どんどん熱を持ち始めている。

それに比例して、心臓も尋常じゃないほど、激しく高鳴っていく。


……久世玲人に触れられると、体が、おかしくなる…。


忘れるな、という言葉の続きを待っていると、ゆっくりと久世玲人の顔が近付き、耳元で息が掠めた。



「……菜都は、俺のってこと」



そう小さく囁かれ、全身が痺れるほど、ゾクゾクする。

立っていることもままならなくて…。


目の前にあるシャツにギュッとしがみつくと、久世玲人は私を抱き締め、そのまま頬にキスを落とした。