「だって、いくら周りから言われたって、好きでもない人に、あんなにくっつかないよ?」
自分の事には疎いとは思えない寺尾から、的確な意見が出るとは。
「その意見も分かるが、そもそも俺の気持ちというのがあるじゃないか」
大塚には友情以外の感情は無い。
「あ! そうかそうか」
あーちゃんが何かにやにやし始める。
「何がそうなの?」
当事者の寺尾は、何も分かっていない様子だが。
「由美はもう。だから、浅野君には、ね?」
おいおい! 何を言い出す? まさか何ページか……いや、昨日の電車の中の続きですか?
「ね? って?」
えーと、また気付いていない寺尾さん。自分の話にはホントに鈍いな。
「もう、由美ってば。まあ今日はいいわ。それより、ホントに浅野君はあの大塚って子と何も無いのね?」
「ああ、それは天使神明に誓おう。無宗教だけど」
「一言多いのよ! まあ信じてあげるし、由美ももう良いみたいだし、この話はとりあえず終わりましょ」
全てをあーちゃんが仕切って終わるというのも、違和感といえば違和感なんだが。
「まあ、今後大塚が何かやってきても、俺は相手にしないし、その辺もちゃんと言って聞かせるからな」
いまさらだが、今までとは状況が違うんだ。
ビシッと男らしく、言い聞かせよう。
「うん、分かったよ。浅野君を信じるからね」
何とか寺尾の機嫌も直った様子だし、よしとしておこう。
「浅野君、よかったね」
ん? 俺の隣から何か聞こえたが?
「村山? 結局お前はハッピーセットおごってもらいに来ただけじゃないのか?」
「え? ハハハ、まあ良かったと言う事で」
『バシーン!!』
「痛いよ! なんで?」
何でも何も、とりあえず一発叩いておくのが常識だろう。
