帰り道、1000人近い高校生が一斉に帰路に着く為、とにかく人人人。

 人混みは好きじゃないが、これなら万が一にも大塚に見つかる事はあるまい。

 と言うか、いまさら大塚の相手をする気もなければ、する必要も感じないが。

「とりあえず、寺尾をどこかに呼び出して話をしたいんだが、どこがいいと思う?」

 バスを待つ間に村山と作戦会議。

 村山に借りを作るのも癪だが、今回は仕方ない。

 二人切りの方が理想ではあるが、実際、先程は二人切りでああいった結果になったんだし。

「ん〜。あ、それならマックが良いんじゃない? あそこの2階に行こうよ」

「そうか。しかしあそこの2階は禁煙席だろ?」

「え? 浅野君タバコ吸うの?」

 スポーツマンにタバコは百害有って一利無し。

 そもそも高校生がタバコを吸うわけがない。

 酒は飲むのに、とかのツッコミは無用。

「吸うわけ無いだろ。何言ってんだ?」

「だって、禁煙席って……」

「ああ。禁煙席だと確認しただけだ。誰もタバコを吸うとは言っていない」

「そうだけど……」

 ふむ。この程度の村山いじめが出来るのなら、平常心に戻ってきているのだろう。

「そんな事目安にしなくて良いから!」

 別に涙目で訴えるほどの事でもないぞ。


 部員一同を乗せたバスが駅前まで行く。

 途中で市立商業の専用バスを見かけたが、別に羨ましくはない。

 共学ならともかく、むさ苦しい男連中の汗くさい車内なんて、想像しただけで吐き気がする。

「そういえば、村山は瀬戸先輩と一緒に帰らなくても良いのか?」

「大丈夫だよ。さっき許可取ったから」

 許可って……奴隷や下撲、使用人じゃないんだから。

 なんにせよ大丈夫ならいいが。さすがに高橋では心もとない面はあるし。