昼休みを終え、新入生一同が体育館に集められた。
はいいが、床に直に座れ、と?
昨日の入学式のまま、イスを並べておけばいいのに。
時期もまだ春先、床が冷たい。
座布団やらクッションを持ち込む女の子の姿もチラホラ。
女の子には冷え対策が許されるのに、男には許されないのは性差別だ。
「それでは今から順番に、各部の紹介をしてもらいます」
演壇の上から、生徒会長を自称していた男子生徒が司会をしている。
まあそんな会長よりも、隣でサポートをする女子生徒・副会長に目がいくのは内緒だ。
順に各部の部長が演壇で自分達の部を紹介している。
いきなりキャッチボールを始める野球部。
いきなり乱取りを始める柔道部……畳無いんですけど。
いきなり走り幅跳びを始める陸上部……砂場無いんですけど。
ホワイトボード全体にMSを書く美術部……美術部ってアナハイム社か?
エアドラムとか言って一生懸命両手を動かす軽音楽部……エアマラカスにしか見えないんだが。
と、最後に登場したのが水泳部、なんだが。
「女の子二人?」
いつの間にか隣に来ていた村山に尋ねた。
「うん。今年の三年生は男子がいないから、女子の部長さん、副部長さんなんだって」
成る程。では男子水泳部が無い訳ではないんだな。
「というか、何故村山はそんな事を知っているんだ?」
俺の中学では、水泳部がある、との情報しか入ってこなかったが。
「あの、中学の先輩が、この学校にいるから」
なんだ、ありふれ理由だな。
まあ実際、そんな事はどうでもいいが。
「で、その先輩情報によると、水泳部はどんな雰囲気なんだ?」
「うん。うちの中学と同じ様な感じだって」
「いや、そもそも第三中学水泳部を知らないんだが」
「あ、ゴメン! えっと、どっちかって言うと、楽しみながら泳ぐ部みたいだよ」
最初からそう言えば文字数減らせたのに。
とりあえず、楽しい雰囲気なら、俺にもありがたい。
