「そういえば、浅野君はテスト駄目だったんだよね?」
あーちゃんが、優越感に浸りながら、上から目線で話してくる。
「テスト? そんなのあったっけ?」
「ごまかすって事は、やっぱり駄目だったんだね」
あ、言われてみればそうだ。墓穴を掘ったな。
「はい、じゃあこれ!」
じゃあ、の意味は不明だが、目の前に差し出された物には見覚えがある。
確かデッキブラシ、と言われる物……の先っぽだけ?
「うん! 柄付きは人数分無いからさ」
ある意味あーちゃんは一年生を支配しているな。
そんな事もありながら、皆で仲良くプール掃除。
「500円玉とか落ちてないかね」
と呟いていると、あーちゃん
「何バカなこと言ってるの? どうせ落ちてるなら札束の詰まったジェラルミンケースとかよ」
それってどこの竹林?
「もう、二人ともちゃんと掃除しなよ」
寺尾に言われ、そそくさ、っと掃除をする振りに戻る二人。
俺の手にあるのはデッキブラシの先だけ、なので、自然と掃除箇所は横壁になる。
上の方はまだいいが、下の方になると体勢がキツイ。
ていうかなんか薬品は無いのか? ただ擦ってるだけってのは効率悪すぎるだろ。
「ねえ、浅野君。この後、水着買いに行くの?」
人にちゃんとやれと言いながら、寺尾が話しかけてきた。
「ああ、高橋がまだ競泳用持ってないらしいし、俺のも結構きついしな」
成長期は終わったとは言え、縦は止まっても横は永遠に止まらない定めだろう。
「じゃあ皆で行こうよ!」
そういわれて、ふと寺尾の姿をジーっと観察。
ふむ、太ももの付け根の辺りはかなり食い込んでますね。
『ピッシャーン!!』
「おわっ!何でこんな集中豪雨が!?」
「浅野君? 良い子だからしっっっかり掃除しましょうね?」
鬼より恐い瀬戸先輩が、本日二度目の降臨をしていた。