「あのですね。人間には羞恥心というプログラムが……」

「由美って恥ずかしい存在なんだ?」

 こら! 最後まで話しをさせろ!

 これは久々にまずい展開だ。

 だいたい、こんな衆人環視の中で、そんな話をするものじゃないのに。

 こういう時に便利な兄北田や村山は離れた席にいるし。

 いざという時に役に立たないなんて、何の為のサブキャラだよ。

「あのですね。今現在の3人の置かれた状況を把握しませんか?」

 あーちゃんが何に熱くなっているのか知らないが、TPOというものをわきまえて欲しいと思う。

 TがTIME、時、で。

 PはPRICE、値段だな。

 OはOVER、越える、終わり、だったかな。

 つなげると、タイムバーゲン終了だ。

 ……この場に合わないのは百も承知している。


 俺の言葉に寺尾は視線だけを周りに配り、気付いたようだが。

 あーちゃんは関係なさ気だな。

「あーちゃん。とりあえずこの話はやめよ」

 寺尾が恥ずかしそうにあーちゃんに言うと、あーちゃんは仕方ない、という表情を浮かべる。

「まったく。由美も意気地無しなんだから」

 それはおかしい理論だと思いますが、まあとりあえずはよしとしておこう。

 だいたいその手の話はその手の場所と相場が決まってるんだし。

 ホッとしようとしたが、何やら周囲からは冷めた視線が突き刺さる。

「何だよあいつ。ツマンネ」

「男らしくハッキリいやーいいのによ」

「多分あいつは末っ子だな」

「二次元ヲタは現実世界ではヘタレなんだよ」

 ……なんだか後半二つは意味がわからんが。

 言いたい放題言ってくれる。

『次は駅前大通、お降りの方は〜〜』

 気まずい雰囲気ながらも、何とか降車駅である駅前に到着。

「まあいっか。けど今度は逃がさないからね」

 あーちゃんは一旦は諦めたらしいが。

 今度って何の事だ?

「じゃあ行こ」

 寺尾は気にしていないみたいだが、何だろう?

 この後があるから、詳しく聞く時間が無いな。まあ明日にでも聞くとするか。