とりあえずこれで初日の競技は全て終了した。
いつもなら、この後は明日に備え、帰って身体を休めるんだが。
今日は、寺尾と一緒に、藤岡先輩に呼ばれたんだったな。
「なあ寺尾。藤岡先輩とはどこで待ち合わせしているんだ?」
「んっと……」
おや? もしかして忘れてないよね?
「あ……場所決めてなかった……」
寺尾も天然だが、藤岡先輩も天然か?
『し〜んぱ〜いないからね〜』
と、いきなり俺の携帯が鳴り始めた。
てーかなんてタイミングの良い着うた。
カバンから携帯を取り出し、サブディスプレイを見るが、未登録の番号だな。
「出ないの?」
寺尾が不思議そうに聞いてきたので、最後に愛はKANな着うたが一周したところで通話ボタンを押した。
『あ、浅野君? 藤岡ですけど』
何で先輩が俺の携番知ってんだ?
『今、大塚さんの携帯からなんだけど』
いや、大塚にも教えてないはずだが。
『待ち合わせ場所、決める前に行っちゃうから』
さすがに藤岡先輩まで天然ではなかったな。
『駅前のスクランブル交差点で待っててもらえるかな。こっちはちょっと遅くなりそうだから』
「了解です。なら着いたらまた連絡ください」
しかし、何故大塚が俺の携番知ってんだか。
「先輩から?」
「ああ。どうやらどこからか俺の個人情報を仕入れたらしい」
「けど、先輩が浅野君の情報、欲しがるかな?」
いや、それはそうですけど、そう言われると、二の句が継げないじゃないですか。
さて、それはいいとして。
寺尾と藤岡先輩は、かなり仲が良いのは分かった。
その2人が久々の再会で、帰りにどこかへ寄るのは自然と言えば自然な流れだが。
その流れの中に俺が入る隙間があるんだろうか?
藤岡先輩は俺を覚えているみたいだが、俺の方があまり覚えていないしなあ。