「じゃあ女の子を見る目がある浅野君は、いつになったらはっきりするのかな?」
あーちゃん! なんて無茶振り!
「何を言いたいのかよくわからんが、あれだ。つまり、うん、あれだ」
ここは『あれって便利理論』に助けてもらうしかない。
「いいけどね。今日は見逃してあげるわよ」
何? ヤケにあっさり引き下がるな。明日は嵐か?
「ね〜ね〜、どこに行くつもりなの?」
話を知らない寺尾があーちゃんに尋ねる。
「やっぱり夏だからプール?」
寺尾さん? わざわざ水泳部がプール行って楽しい?
「プールよりも、海がいいかな、と思ってるんだけど」
あーちゃんは水着になるのに抵抗が無いのか?
「浅野君が思ってるような、人に見せられない体型ではないですけど!」
おおコワッ!!
まあたしかに、スク水姿を何度か見た時があるが、それなりのスタイルだったかな。
寺尾を始め、選手は皆が細いから、比較すると増量中に見えるだけか。
「海と言ってもどこまで行くつもりなんだ?」
この県には海がないから、海に行くなら隣県に行き、さらにその端(海岸線)まで行かなくてはならない。
当然時間も費用も掛かるのだが。
「内海がいいんじゃない? 電車で一本だし」
というか、場所まで考えているってことは、海は決定事項な訳ですね。
「内海か。ちょっと人が多いんじゃないか?」
この辺りの定番海水浴場だけに、夏休みにはニュースでよく取り上げられている。
わざわざ人の多いところを選ばなくても。
「でも、有名どころなら更衣室とか海の家とか、施設がちゃんとしてそうじゃない?」
そうか。野郎は適当に着替えればいいが、女子高生ともなれば着替える場所は重要だしね。
「分かった。では内海ということで。って馬場や木田はそれでいいのか?」
こちらで勝手に決めても、向こうが嫌がれば変更しなくてはいけないが。
「私が決定っていえば、文句は出ないわよ」
あーちゃんはすでにあの二人まで支配してるのか。