そんな会話をしながら、帰り支度をしていると、村山の携帯が鳴る。

 着うたがベッキーとか、どうよ? まああのPVは嫌いじゃないが。

「電話か?」

「あ、えっと、あの、先輩からのメールだよ」

 何をそんなに慌ててるんだか。

 部内公認の仲なんだから、いまさらメールのやり取りくらいで囃し立てないがな。

「え〜、先輩からのラブラブメールなんだ〜。見せて見せて」

 どうやらあーちゃんは今でも囃し立てるようですが。

「そういえば、瀬戸先輩は何となくベッキーに似てるか?」

 隣にいた寺尾に何気なく聞いてみる。

「そう言われれば、何となく目元とか、あ、あと全体的にハーフっぽいもんね」

 純和風な酒蔵の娘がハーフっぽいのも、ミスマッチだが。

「けど、ハーフっぽい方が、意外と着物が栄えるよね」

 寺尾にもギャルゲーの素質があるのか?

「それはギャップに萌えるってやつじゃないか?」

「それは浅野君でしょ?」

 はい?

「俺にはそんな趣味は無い。逆に見た目そのままの方が良いと思うがな」

「ふ〜ん、そっかなぁ?」

 どうも寺尾といい、あーちゃんといい、俺を二次元側の住人と勘違いしているよな。

 ホントの二次元住人を一度紹介してやりたいよ。

 は、いいとして。

 あーちゃんが村山の携帯を取り上げ、メールを見始めた。

「あーちゃん、見たいのは分かるが、ホントに見たらダメだろ」

「けど、先輩は村山君のメール、見せてくれるよ?」

 ……いいのか? それ。

「もしかして、俺のメールとか、見せてないよな?」

 と寺尾に聞いたら……何かバツの悪そうな顔をしている。

「見せているんだな?」

「たま〜に、ね?」

 何故に語尾が疑問形なのかは不明だが。

「まあ今までのメールなら、たわいもない世間話だけだからいいが」

 やれやれ。どうせあーちゃんが無理矢理見てるんだろうし。

「見せちゃダメなメールも送ってくれるの?」

 ……どっちの意味だろ?