今日は4人とも俺に質問してくるから、俺の勉強時間は無かったようなものか。
「浅野君教えるの上手だよ」
「そうか? けど村山は元々できる方だからな。他の3人は……」
といいつつ視線を向けると
「大丈夫。試験範囲は十分勉強できたし」
とあーちゃんは、その大きな胸を張るが、胸の小さい2人は、顔を見合わせて苦笑いをしている。
「もしかして、あまり理解してないのか?」
「そそそそそんなここここことは、ななななないかな?」
「思いっきり動揺しとるやんけ!」
まったく、マンガや小説じゃないんだから、動揺したからってどもるものか?
「でも私はいいけど、浅野君と由美ちゃんは追試になるとヤバいよね」
「何がヤバいんだ?」
「あれ? 知らないの? 多分、追試は市大会の前日になるよ」
「マジ? それは結構ヤバいじゃないか」
追試の勉強と大会直前の追い込み練習はキツイぞ。
それに藤木先生は文武両道を、口裂け女になる位の勢いで、口うるさく言っている人だし。
「そんなぁ。これ以上勉強したらバカになっちゃうよ」
勉強してバカになる人は見たこと無いが、それくらい頭に詰め込んで爆発寸前、と言いたいのであろう。
「てーか、市大会ってエントリー終ってるのか?」
県予選の時は打ち合わせがあったが……あ、その時俺は出てなかったか。
「うん、これからの大会は先生と部長で決めるらしいよ」
「県予選みたいに浅野君が駄々こねるから、独断で決めるんだって」
「ちょっと待て! 駄々っ子になった覚えは無いぞ!」
そもそも県予選は、レース距離を嘘ついたり、レース日程を勘違いしたりしたからじゃないか。
「でも今年の浅野君は、バッタとフリーの長距離って決まってるよね」
人事だからか、村山は当たり前の如く言ってくるのが、非常にムカつく。
「ってちょっと待て。それって県予選だけの話じゃなかったのか?」
そもそもフリー選手は3人なんだし、村山はフリー以外出れないのは仕方ないにしろ、俺と兄北田は交代で出るとか……。
「お兄ちゃんがそんな面倒な事するわけ無いじゃん!」