彼-id-SCOUP

 
 ん?

 あれ?

 1番、ツラい?

 そうだ。

 さっきまではあんなに“人前で発表すること”から、とにかく逃げ出したくてたまらなかったのに。

 いつの間にかそんなことどうでもよくなってて。

(はは……“そんなこと”だって)

「……おい」

「え? あ、はい!?」

「おまえ、ひとりぼっちじゃ心もとないからって、俺をわざわざ呼んだんじゃねぇのかよ」

 あ、天音ちゃん、えらくストレートに事情を説明したのね。

「あ、まぁ、そうです。はい。それが?」

 少し釈然としないものがあったけれど、別に間違いというわけでもなかったので正直に答えると、

「ふん……」

 無愛想な顔をさらに不機嫌そうに歪めて、

「にやけてるとは、随分と余裕じゃねぇか」

「え? にやけてる? わたしが?」

 慌てて口元を手で隠す。

 と同時に恥ずかしさで頬が、いや全身が上気していくのがわかった。

「ふやけた昆布が今度は“ゆでだこ”ってか?」

「なっ!?」

「おっと、お偉いさんのご登場のようだぞ」

 お、お偉いさんって。

 どこかの企業に商品アピールにきたんじゃないんだから。

 んもぅ。

 怒ればいいんだかツッコめばいいんだか。

 でも、

「ま、しっかりやんなよ。取りあえず寝るのだけは我慢してやるから」

 ちょっとだけわかった。

「いわれなくとも」

 この人、見た目に反して思ったよりいい人だ。

「あっそ。とかいって“かむ”なよ?」

 たぶん。