彼-id-SCOUP


「てか、みずくさいんですけど」

「ふぇ?」

 わたしの鼻をつまんで視線を固定させてるくせに、自分はついっ、と視線を逸らせたりして。

 頬を若干、朱に染めた彼女は、

「まずは1番に誘いなさいよね」

 さっきと同じようにすねながら。

 けれどさっきと違ってちょっと照れくさそうに、

「無理かどうかなんてさ。アタシが決めるんだから」

 そういってわたしの鼻を解放した。

「天音ちゃん……」

「そりゃさ。アタシたちは出逢ってまだ半年も経ってないけどさ。でも……」

 最後の方の言葉は力なくかすんでしまったけれど。

 彼女がなんといったのかなんてその“みみたぶ”の色をみれば、まさに一目瞭然というやつだ。

「天音ちゃん」

「なんだね美織くん」

「…………」

「…………」

「照れくさいんですけど」

「花の高校1年ですから」

「空、青いしね」

「春、終わったけどね」

「…………」

「…………」

 フェンスの隙間から覗く景色は、水彩絵の具で塗ったような青で。

 そこにその青を傷つける物なんて何もなくて。

 絆とか、友情とか、親友だとか。

 そういうちょっぴり恥ずかしい言葉たちをわたしたちは、

「青春ですねぇ」

「青春だねぇ」

 その2文字に詰め込むのだった。