立ち上がり、深く深く頭を下げる。
申し訳ない気持ちが精一杯表れるようにと、出来る限り深く。
せっかくの、それも度を越えた厚意を拒むことは、本当は失礼なのかもしれないけれど。
でも、やっぱり、わたしなんかのためにしてもらうのは申し訳ないにもほどがある。
ううん。
そうじゃない。
たぶんわたしは“怖い”んだ。
そこまでのやさしさに出逢ったことがないから。
物語の端役にすらなれたことのない、そんなわたしにはこの厚意は“重過ぎる”。
なのに──
「理由ならありますよ」
いともたやすくわたしの言葉をひっくり返すその言葉。
その口調はあまりにもあっけらかんとしていて。
次の言葉へのリアクションを1テンポ遅らせた。
「実は僕も天文学部だったんですよ」
「……はぁ。って、えぇっ!?」
「1年のときまでですけどね。2年にはもう生徒会に入りましたから」
まさかの事実。
けれど先輩の話を聞いて、どうしてここまでわたしに協力してくるのか、その理由がわかった。
「実はですね。天文学部がなくなったのは僕のせいでもあるんですよ」
ことの始まりはこう。
まず先輩が2年に上がったとき、当時の生徒会の方から誘いを受けたのだそうな。
そのときすでに部として成立する規定の5人ぎりぎりしかいなかった天文学部。
生徒会は部活動との両立をその活動の性質上禁止されている。
だから生徒会に入るということはつまり、天文学“部”がなくなるということを意味していた。
「悩みはしたんですけど、ね」
もともとその頃には部は幽霊部員の集まりで、きちんと活動しているのは自分ひとりだったそうで。
誘ってくれた先輩に少なからず恩義があった先輩。
この際ということで天文学部を廃部にする方を選んだのだそうだ。


