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 同好会じゃなくて部として申請すればいいだけの話かもしれない。

 けれど、そのためには最低でも部に在籍する人数が5人は必要。

 たった5人のように思えるかもしれないけれど、もうこの時期じゃほとんどの人が入部してる。

 全校生徒をあたっても、そんな人数が揃えられるかどうか……。

 途方に暮れるわたし。

 いくら唇を噛んでみても、現状は変わらない。

 でも、そうせずにはいられない。

 だって、わたしはそのためにこの学校に──

「3人……」

「……え?」

 膝の上で握り締めていたこぶしにフッ、と降り注ぐ声。

 顔を上げると、初めて逢ったときのように逆光を浴びた先輩が微笑んでいて。

「琴引さんを含めて3人。それで天文学同好会ではなく、天文学“部”として承認しましょう」

「え、えっ!?」

 突然の“クモの糸”に戸惑うわたし。

 だって先輩は、わたしに“校則を変える”といっているのだ。

 混乱しないはずがない。

 わけがわからず疑問符を盛大に頭上に打ち上げるわたしに先輩は、

「うちの学校はそもそも、生徒の自主性を重んじる学校です」

「はい……」

「部の乱立は学校全体の予算から考えて制限しなければなりませんが、かといってそのことで生徒の自主性を育む芽を摘んでしまうのは本末転倒に等しいでしょう?」

「で、でも……それって」

 うぬぼれかもしれないけれど、事実として“わたしのためだけ”に校則を変えようとしてるってことになるんじゃ。

 それにそんなことをして先輩の立場が悪くなってしまうなんてことになったら……。

 ぐるぐるぐると頭の中をいろんな想いが駆け巡る。

 確かにすがれる物は何でもつかもうとは思ったけれど、それはわたしの責任の範囲内でのことであって。

 断らなきゃ。

 嬉しいけれど、これはケーキをご馳走になるのとはわけが違う。

「あ、あの」

「はい?」

「ありがたいお話ですけど。先輩に、その、そこまでのことをしていただく理由が、ないです……」