こいつの事を殴れば、彼女は怒るのだろうか。
泣くのだろうか。
それとも、あの色のない瞳で「そうですか。」と呟くのだろうか。
俺に選択の余地はない気がした。
「先輩、遅いです。」
俺の腕を止めたのは、彼女だった。
いつも体温が冷たくて、冷静にさせてくれるその手。
強い力ではない。
振り払って、こいつを殴る事だって可能だ。
「あまりに遅いので、迎えに来ました。」
走ってきたのか、少し苦しそうに息をしている。
周りを囲む空気を、彼女は少しずつ溶かす。
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