【それぞれの夜ー4】



薄暗い小さな坂を越え、
広々とした野原に出たが

今日は少し風が強い。






せっかくの花が
舞ってしまう。







螢は近くの花屋で
買ってきたスズランを
そっと目の前の
墓に添えた。







墓には『踝麗花』と
書かれている。







手をしっかりと合わせ、
死んだ人の冥福を
祈っていた。







「麗花……
あの世で元気でな」






どうやら螢は
麗花と言う娘の
墓参りに来てるらしい。







いつもの
厳つい雰囲気とは違い、

柔らかな表情をしている








「さてと……
ついに明日は………」







何か、
意味ありげな言葉を残し

そのまま
スっと暗い森の方へと
姿を消していった…