空に浮かぶ細い三日月。

ざわめく木々。

延々と続く廊下で、高校生にもなって鬼ごっこ。


「し…どい!……しんどいよ死ぬよ!」

《我慢して〜。電話切っちゃったら死ぬよ?》

「何で!?……あギャー!!来てる来てるすぐ後ろまで来てるっ!!」

《何がなんでも走ってね。》

「言われなくても走って……うギャー!!生徒会長が道塞いでる!!」


気がつけば、あたしの逃走経路の先には生徒会長が立っていた。

なんとも無表情な顔をして立っていた。


殆ど真後ろでは、シグレとアユムが涼しい顔をして遊び感覚であたしを追いかけていて。

白目を剥きそうになった。

泡を吹きそうになった。


もう無理だろ。逃げ道ないだろ。


どっかの教室に入ればいいんだと思うんだけど、もしも扉に鍵がかかっていたらその時点で追い付かれてしまう。


「カスミあたし…ハァッ…どうすればいい!?」

《走って〜。》

「これ以上…ハァッ…走り続けたら生徒会長の胸…ッ…に飛び込むことになるんだけど!!」

これは決して比喩表現ではない。


《じゃあ飛び込んじゃえ!》

「……ハァッ……ハァッ……死ねっ。」