鍵を開けた直後、家に入る直前。

突然あたしのケータイが震えた。


ディスプレイを見てみたらお父さんからの電話だった。


「何?」


もしもしなんて言う必要ないから、電話に出た直後に本題に入るあたし。


《もしもし、こまちちゃん?》

「…え?あ、はい。後藤さん…ですか?」

《うん。よくわかったね。》


受話器の向こうはお父さんではなく、お父さんの会社の同僚の後藤さんだった。

たまに家ご飯を食べに来るのを見てるから声くらいは知ってる。


「どうしたんですか?」

《いや、君のお父さん。酔い潰れちゃってさ…》


まさか。


「………。」

《一人じゃ到底、家に帰れそうにないから、今日は俺ん家に泊まらせるよ。》


まさかの。


「………。」

《大丈夫。明日は会社が休みだから気にしなくていいよ。》

「………は、い。……お世話になります。父をよろしくお願いします。」



まさかの緊急事態。